フィトンチッドという名前は、ロシア語で、フィトン=「植物」 チッド=「他の生物を殺す能力を有する」という意味をもちます。
1930年頃、ロシア(旧ソ連)の科学者B.P.トーキン博士がこの植物が持つ不思議な力を発見しフィトン(植物が)チッド(殺菌する)と名付けました。
これを繋げて読むと、「植物からでる揮発成分は殺菌作用がある」という意味になります。
フィトンチッドは、自由に動き回ることのできない植物が、害虫などの外敵から攻撃や刺激を受けたり、傷ついた時でも病原菌に感染しないように傷口を殺菌したり、害虫を寄せ付けない為にフィトンチッドを作りだし、発散することによって、自らの身を守ります。
フィトンチッドも植物が身につけた生きるための能力の1つです。樹木にとっては、自分の身を守るためのバリアのようなもので、まさに生命の神秘といえます。
近年の研究では、このフィトンチッドこそが、誰の力も借りることなく樹木が何百年、いや何千年と
生き続ける生命力の源だと考えられるようになりました。
代表的な効果として・・・
森林内には悪臭の原因となる動物の死骸や腐敗した植物などがたくさんあるにもかかわらず、さわやかな空気が広がっています。これはフィトンチッドのもつ消臭効果が発揮されているからです。フィトンチッドの消臭作用は「分解中和消臭」と呼ばれる作用で、悪臭成分に付着し無害化、まったく別の成分に変えてしまいます。
フィトンチッドの抗菌作用は、病原菌である大腸菌や黄色ブドウ球菌などに強く作用します。その反面、非病原菌への作用は緩やかであり、必要なものは殺さないようにできています。これも樹木にとって有害なものを選別して作用するために発達した、自然の力です。
森林浴をおこなうことで、人体にリラックス効果があると証明されました。このリラックス効果の元となる物質がフィトンチッドであると言われています。医療先進国であるドイツでは、森林浴が医療行為として認められています。
抗酸化能力とは「酸化を防ぐ力」です。「鉄が錆びる」「物が腐る」は酸化によるものです。人体の老化現象も酸化によっておこると言われており、美容業界でも抗酸化作用は注目されています。その他にも、寿司屋のネタケースには「椹(サワラ)」の葉が、使われています。これは腐りやすい生魚の鮮度を保つために、植物の持つ抗酸化力を活かした先人の知恵であり、近年では科学的な視点で見直され、様々な分野で役立てられています。